2007年8月11日土曜日

怪物庭園 その伍

ドラゴンまで戻って上に行くと地獄の首がある
The Ogre or Orc(L'ORCO)
人食い鬼だと言われている
巨大な人間の首。
しかめ面を見せている
人間の首のまわりに、
茨や潅木は蓬々と
生い茂り、まるで
この顔の芝居じみた
恐ろしい髯のようになっている。
その口は、何でも呑みこんでやるぞ
と言わんばかりの大きさで、
あんぐり開かれているので、諸君はちょっと
頭を低くするだけで、怖ろしい歯のあいだを
くぐり抜けて、その中へ入ることもできるほどである。
口のなかは、ちょうど舌のあるべき場所に、
自然の岩を彫り刻んだ一脚のテーブルと腰掛があり、
諸君はそこに腰をおろして休むこともできる。
」*1

地面から首だけ突き出して、絶叫している
怖ろしい地獄の魔王の顔のようである。
この顔の口は、直径二メートルを越えるから、
優に人間が立って通れるだけの大きさを有し、
一種のグロッタになっている顔の内部には、
石を刻んだテーブル(同時に舌に見立ててある)が
備え付けてある。グロッタの内部で笑い声でも立てれば、
その声は大きく反響して、口から外へ飛び出し、
あたかも地獄の魔王が哄笑しているようにも
聞こえたことであろう
」*2

平べったい鼻、空っぽの丸い目、
はっきりしない弓なりの眉、大きな開いた口からなる
巨大な頭。岩の内部を洞窟のごとく抉り抜き、
その巨大な岩を、俄か隠者の部屋に変える。
唇の周りにはダンテに示唆された碑文がある。

汝ら、中に入る者よ、すべての思いを置いてゆくべし
 」*3

眠れるニンフの所まで戻り、左にいくと
大股びらきの人魚・怪物エキドナとハーピーがいる

Echidna(L'Echidna)

鱗のはえた二本の脚を百八十度にひらいて、
いわゆる『大股びらき』の姿勢で地面にすわった、
両手の欠けたタナグラ人形のような、
愛らしい顔のニンフがいる
」*2

そこを上に行くとオルシニ家の紋章をかたどった熊がいる

The Bear (ORSETTI ARALDICI)
熊は後脚で立ち上がり、胸のところに
紋章の花を捧げ持っている。
古い葡萄酒の色をした石で彫られたこれらの動物は、
オルシニ家の家名をもじった紋章なのである。
」*1

入り口まで戻って、右に行かずずっとまっすぐ行くと神殿がある

The temple(TEMPIETTO)
樹の根がはびこって、石材は離れ、
下から持ち上げられている。蓬々と茂った雑草や
イラクサや茨が、その割れ目に食いこんでいる。
建物の基礎は緑のなかに埋まり、美しい柱廊は
難破船のマストのように、天に向かって傾いている。
」*1

その下には地獄の門番、ケルベロスがいる

Cerberes (CERBERO)
岩の上に据えられた、伝説によれば
地獄の門を守っているという、非常に長い首の
先に頭の三つある、一匹の犬が見える。
三つの頭は、大蜥蜴もしくは有史以前の
爬虫類のようでもあり、警報のサイレンの
三つの口をも連想させる。
」*1

入り口まで戻って、左へ行くと怪物の首がある

The Proteus(PROTEO)

額にオルシーニの盾の縞で飾られた
球がのっている恐ろしい怪物は私自身の象徴、
一族の栄光の紋章の重みを支える奇形の
象徴であった。上方に、私は要塞を、
ボマルツォの要塞を型どらせた。
オルシーニ家とボマルツォが私を
抑圧していたが、私は母なる大地に
ほぼ沈み込み、怯えながらも両者に堪えていた。
 」*3

以上で、庭園散歩はおしまい。
長々とおつきあい感謝。

photo Author: stelosa
文中青文字は*1『ボマルツォの怪物』から
紫文字は*2『ヨーロッパの乳房』から
群青文字は*3『ボマルツォ公の回想』からの引用

3 件のコメント:

Unknown さんのコメント...
このコメントは投稿者によって削除されました。
匿名 さんのコメント...

ご訪問ありがとうございました!ボマルツォ編、興味深く読ませていただきました。ボマルツォはまた行ってみたくなるところです(^^)

quu さんのコメント...

こちらへもコメント、ありがとうございます。
老後の旅行にぜひ訪れたいので
それまで記事を残しておいてくださいね!